子宮内膜症・チョコレート嚢胞と漢方薬

子宮内膜症・チョコレート嚢胞とは?
子宮内膜様組織が子宮腔内面(内膜)以外の場所にできる疾患で、はっきりとした原因は未だに分かっていません。妊娠適齢期の女性に多くみられ、不妊症の原因のひとつになります。
月経痛や性交痛、排便痛などの痛みで受診した際に、内診・直腸診、エコー検査、MRI検査などで発見する場合や、自覚症状がなく不妊治療の際に、腹腔鏡検査などで発見される場合があります。
子宮内膜症の中でも、卵巣内で発生したものを子宮内膜症性嚢胞といい、月経のたびに出血し、体外に排出されずに貯留し、チョコレート色の嚢胞を形成するため、チョコレート嚢胞と呼ばれます。検査では、エコーやMRIで卵巣の腫大がみられます。
子宮内膜症・チョコレート嚢胞の症状
☑️疼痛
月経痛、慢性骨盤痛、性交痛、排便痛などがみられ、中でも月経痛は、月経を重ねるごとに次第に痛みが強くなる傾向にあります。
☑️不妊
子宮腔以外での場所で子宮内膜様組織が増殖を繰り返したり、炎症や癒着を引き起こしたりすることで、不妊の原因になることがあります。
その他、貧血や腫瘍マーカー検査に用いられるCA125が高値なることもあります。
また、内膜症の発生部位(ダグラス窩・膀胱子宮窩・卵巣・卵管・子宮漿膜など)によっても、症状が異なります。
西洋医学での治療
✅鎮痛剤
月経痛などの痛みが強く、生活に支障をきたす場合はロキソニン、ボルタレンなどの鎮痛剤で対応します。
あくまで疼痛に対しての対症療法ですので、内膜症そのものに効果はありません。
✅ホルモン療法
・LEP(低用量ピル)・・・ルナベル、ヤーズなど
本来は体から分泌されるエストロゲンとプロゲステロンと言う2種類のホルモンを服用することで、
体からの分泌が抑えられ、排卵を一時的にストップすることができます。
子宮内膜症は、エストロゲンに依存性で症状が進行するため、低用量ピルの服用により進行をくい止めたり、
遅らせたりすることができます。また月経痛も軽くすることが可能です。
・黄体ホルモン・・・ディナゲスト
子宮内膜の増殖を抑制する働きがあるジエノゲストと言う黄体ホルモンです。
LEP同様に服用により、排卵がストップすることで、子宮内膜症の進行を抑え、月経痛を軽減させます。
・GnRHアナログ・・・スプレキュア、リュープリン
女性ホルモンなどの性ホルモンの司令塔である脳の受容体に働きかけ、排卵をストップさせます。
偽の閉経状態にすることで、子宮内膜症を縮小を期待できます。
✅手術療法
主に腹腔鏡により、卵巣チョコレート嚢胞の摘出や癒着の剥離、病巣の除去や焼灼が行われます。

漢方薬での対応
中医学では、子宮内膜症の原因の多くは、ストレスや自律神経の乱れによる気の流れが滞った「気滞」の状態と、それに伴い血の流れが悪くなった「瘀血」の状態と考えます。
そのため漢方薬・サプリは、気滞症状に逍遥丸やシベリア人参を、瘀血症状には冠元顆粒や爽月宝を、またどちらの症状にも使える芎帰調血飲第一加減などを使います。
また卵巣チョコレート嚢胞の場合は、上記の気滞や瘀血以外に、体に余分な水分が溜まった「痰湿」があると考え、水分代謝を助ける漢方薬を用いることもあります。
漢方薬はあくまでも一例で、同じ病気でも体質や症状により薬が変わるので、必ずご相談の上で服用ください。
まとめ
子宮内膜症は場所や程度によって症状は様々ありますが、疑いがあれば、まずはしっかりと検査をして状態を把握することが大切です。状態により治療法が変わるので、今後の妊娠の希望の有無などを考慮した上で、治療を検討しましょう。
中医学では、上記のように気血の流れが悪い傾向にあるので、まずはストレスを溜めずに発散する方法を見つけましょう。
柑橘系の果物や香味野菜はスーッとして、気の巡りを助けてくれますので、食事で上手に摂りましょう。