多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と漢方薬

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?


多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic ovary syndrome:PCOS)は、卵巣内に多数の小卵胞が存在し、成熟した卵子が排卵が障害されるために、不妊症の原因になる疾患の一つです。

実際の診断では、

☑️月経異常(無月経・希発月経・無排卵)

☑️多嚢胞性卵巣

→卵巣内に多数の発育途上の卵胞(嚢胞状の小卵胞)が存在し、エコー検査で一列に並んで見えるため、「ネックスレスサイン」と呼ばれます。

☑️男性ホルモン高値orLH高値かつFSH正常

上記の検査結果により診断され、不妊症の原因になる他、肥満や耐糖能異常、多毛、ニキビなどの症状や所見が見られることがあります。

 

西洋医学での治療


妊娠の希望の有無に関わらず、肥満傾向であれば運動などによる体重コントロールが必要になります。

妊娠希望の場合:成熟した卵子の排卵を目的に治療をします。

クロミフェン療法:クロミフェン(クロミッド錠など)による内服での排卵を誘発します。一般的にはクロミフェンを月経5日目より5日間服用します。

インスリン抵抗性改善薬:肥満や、耐糖能異常、インスリン抵抗性がある場合は、インスリン抵抗性改善薬のメトホルミン(メトグルコ錠など)を併用すると排卵妊娠率が改善される場合があります。

※インスリン抵抗性:血糖を下げるホルモンであるインスリンの感受性が悪く、インスリンが十分に分泌されても、効果を発揮できない状態。

ゴナドトロピン療法:クロミフェン療法で排卵や妊娠がない場合は注射剤であるゴナドトロピン製剤(FSH製剤(フォリルモンP注など)や、rFSH製剤(ゴナールFなど))により排卵を誘発します。

卵巣多孔術(LOD):卵巣に穴を開けることで、自然排卵の回復を期待する手術です。

生殖補助医療(ART):他の治療が有効でない場合や、排卵誘発によって多胎妊娠や、卵巣過剰刺激症(OHSS)のリスクがある場合は体外受精で妊娠を目指す場合もあります。

 

②妊娠希望の予定がない場合:子宮がん等の予防を目的とします。

・ホルストロム療法や低用量ピルの服用:恒常的に卵胞ホルモン(エストロゲン)刺激にあるため、黄体ホルモンを補充するホルストロム療法や低用量ピルの服用で定期的な消退出血を起こさせる事で、エストロゲン過剰刺激による子宮内膜がん等の予防をします。

 

漢方薬での対応


中医学で多嚢胞性卵巣症候群の方は、脾胃(消化器系)の働きが弱かったり、暴飲暴食などの生活習慣によって、体に余分な水分等が溜まっている「痰湿(たんしつ)」の状態や、血の流れが悪く、うまく排卵できない「瘀血(おけつ)」の状態になっている事が多いです。

痰湿に対しては、体に溜まった余分な水分等を取り除く、化痰(かたん)」の働きのある漢方薬(シベリア霊芝温胆湯うんたんとうなど)を使います。

瘀血に対しては、血の流れを巡らせる活血(かっけつ)」の働きのある漢方薬(爽月宝そうげつほう冠元かんげん 顆粒など)を使います。

この他、血が不足して、血の巡り悪い場合には、血を補う補血(ほけつ)」の働きのある婦宝当帰膠ふほうとうきこうなどを使います。

多嚢胞性卵巣症候群の場合、上記の状態を考慮しますが、あくまで中医学は病名だけにとらわれず、体調や体質を考慮して薬を選んでいきます。

また、睡眠不足や食事をはじめとした生活習慣が痰湿や瘀血の原因になりますので、薬だけに頼らず、少しでも生活を見直していただく事が大切です。

2018年10月20日 土曜日