副鼻腔炎(蓄膿症)と漢方薬
副鼻腔炎(蓄膿症)とは?
副鼻腔炎とは、眼の上(おでこ)の前頭洞 、両目の間の篩骨洞 、眼(鼻)の奥の蝶形骨洞 、眼の下(頬)の上顎洞 の4つの副鼻腔と呼ばれる、骨で出来た空洞に炎症が起こる疾患で、蓄膿症とも呼ばれます。
急性の場合は、自然に治る事が多いですが、慢性化した場合は、鼻づまりだけでなく、頭痛や目の奥の痛みなどを伴うこともあり、お困りの方が多い疾患のひとつです。
原因と症状
原因
元々は風邪や虫歯などからの感染や、アレルギー性鼻炎が原因で鼻腔粘膜に炎症が起こり、その炎症が副鼻腔に広がった状態が副鼻腔炎です。
短期間で自然に治癒した場合は良いですが、厄介なのは慢性化した場合です。
副鼻腔の粘膜に炎症→粘膜の働きが落ち、腫れる→腫れることで、鼻腔との連絡口がつまる→連絡口が詰まると換気が悪化して、更に炎症が治りにくくなる悪循環に陥ります。
また、ひどい時は腫れた粘膜が鼻腔にまで広がり、ポリープ(鼻茸)になる場合もあります。
この他、鼻の骨の構造上の問題も関与することもあります。
症状
鼻閉(鼻詰まり)、鼻汁(鼻漏)の2大症状。
鼻漏は鼻の穴からでる場合と、喉にまわる後鼻漏があります。
更に鼻以外の症状では頭痛、頭重、眼の奥の痛み、嗅覚障害など
西洋医学での治療
内視鏡を使った手術療法、鼻から蒸気を吸うネブライザー療法、クラリスロマイシンなどの抗生物質、ムコダインなどの去痰剤、アレロックやアレジオンなどの抗アレルギー薬が主体となりますが、画像検査をした上で、症状の程度に合わせた治療が行われます。
漢方薬での対応
だいたい下記の5タイプに分かれますが、いずれのタイプも鼻詰まりが強い場合は鼻淵丸 を中心にし、さらに頭痛など頭部の症状によく使う頂調顆粒 (川芎茶調散)を併用する場合が多いです。
①肺経風熱(はいけいふうねつ)
風邪などをきっかけに、邪熱が肺の経絡にのり、鼻を塞いだ状態。
症状:鼻水、鼻づまり、頭痛、発熱、悪寒、咳…など
漢方薬:鼻淵丸、辛夷清肺湯
②胆腑鬱熱(たんふうつねつ)
ストレスが溜まり、イライラが続いた時に、気の巡りが悪くなり悪化した状態。
症状:口が苦い、喉の乾燥、粘りのある黄色い鼻水
漢方薬:荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、瀉火利湿顆粒
③脾胃湿熱(ひいしつねつ)
暴飲暴食など、食事の乱れにより、脾胃(消化器系)の働きが落ちて症状が悪化する。
症状:黄色くて濃い鼻水、鼻汁が臭い、鼻づまり、体が重だるい、頭が重い、食欲不振
漢方薬:茵陳五苓散、温胆湯、勝湿顆粒
④脾肺気虚(ひはいききょ)
脾(消化器系)や肺の機能が落ちて、体の抵抗力が落ちている状態。
症状:多量の薄い鼻水、くしゃみ、疲れやすい、風邪を引きやすい、息切れ
漢方薬:補中益気湯、衛益顆粒など…+ 小青竜湯
まとめ
副鼻腔炎(蓄膿症)は、症状は鼻にあるものの、中医学では原因を鼻だけではなく、脾胃やストレスなど、多方面から考え対応しています。
症状が長引かず、短期間で治る場合は西洋医学も良いですが、なかなか治らない時は、別の原因や対処を考えるのも一つの手ではないでしょうか?
また、副鼻腔炎に限らず、お酒を飲むと次の日に鼻がつまる、風邪でもアレルギーでもないのに、くしゃみや鼻水が出る、などの経験がある方も多いと思います。そんな時は、中医学の視点でみると意外と改善法が見つかるかもしれません!