低用量ピル(LEP/OC)とは?

月経困難症(生理痛)や月経前症候群(PMS)、子宮内膜症などの治療のひとつとして頻繁に用いられる低用量ピル。
使用頻度の割に、未だに「ピル=避妊」だけのイメージや、副作用への不安から敬遠する方も多いようです。

低用量ピルの正しい知識を身につけ、上手に利用しましょう。

 

低用量ピルとは?


まずはピル、低用量ピル、OC、LEPの言葉を整理しましょう。

ピル:経口避妊薬をピルと呼びます。また一般的にピルと言った場合は、低用量ピルを指している事が多いです。

低用量ピル:含有するホルモンのエチニルエストラジオール(EE)が、 50μg 未満のものを低用量 、50μg のものを中用量 、それを越えるものを高用量と言います。高用量で血栓症などの副作用のリスクが多くみられたため、現在は副作用を最小限にするために低用量のものが用いられております。

OC:oral contraceptiveの略で、日本語で経口避妊薬(ピル)と言う意味です。

LEP:Low dose estrogen-progestinの略で、内容はOCと同じです。月経困難症などの治療を保険適応で行う為、自費の避妊薬であるOCと区別する為にLEPと呼ばれます。

以上のように、言葉に惑わされてしまいますが、ピル、低用量ピル、OC、LEPは言葉は違えど、中身は全て同じものを指します。

ピルの成分はエストロゲンとプロゲステロンが組み合わせて出来てます。
この成分により、FSH・LHの分泌抑制→卵胞の発育・排卵抑制、子宮内膜の増殖抑制、頸管粘液の粘度上昇などにより避妊効果が得られます。

 

ピルのメリット・デメリット


ピルには避妊以外に様々のメリットがあり、そのメリットが治療に利用されています。

メリット

・月経困難症(生理痛)、月経前症候群(PMS)の改善。
・子宮内膜症の症状緩和、卵巣子宮内膜症性嚢胞の縮小。
・子宮体癌、卵巣癌の発生率低下。
など、子宮内膜の増殖や排卵が抑制され、生理がお休みされている事によってのメリットが多いです。

デメリット

・静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク増加。
・子宮頸癌(5年以上の服用)でリスク増加。
・虚血性脳卒中のリスク増加。

中でもVTEは頻度こそ少ないものの、致死的な場合もあります。初期症状をチェックして、十分に注意しましょう。

副作用のチェックーACHES(頭文字と痛みを意味する英語)
A:abdominal pain (激しい腹痛) 下大静脈や腸間膜静脈の血栓の可能性
C:chest pain(激しい胸痛、息苦しい,押しつぶされる痛み) 急性肺塞栓症の可能性
H:headache(激しい頭痛) 脳の中心静脈洞血栓や、脳動脈血栓などの可能性
E:eye / speech problems
(見えにくい,視野が狭い,舌のもつれ,失神, 意識障害)
脳に血栓由来の視力障害や言語障害の可能性
S:severe leg pain(ふくらはぎの痛み,むくみ,発赤) 下肢の深部静脈血栓の可能性

 

ピルの種類


ピルには、黄体ホルモンの種類(第1〜4世代)、ホルモンの配合量(1相性・3相性)、飲み方(休薬期間)、保険適用の有無によって種類があります。

  世代 製品名 配合 投与方法
LEP
(保険適用)
第1世代 ルナベル配合錠LD・ルナベル配合錠ULD 1相性 実薬21日間・休薬7日間
第2世代 ジェミーナ 同上または77日間連続・休薬7日間
第4世代 ヤーズ

ヤーズフレックス

実薬24日間・プラセボ4日間

実薬24日間・休薬4日間
または最長120日間連続

OC
(自費)
第1世代 シンフェーズ 3相性 実薬21日間・プラセボ7日間
第2世代 アンジュ・トリキュラー・ラベルフィーユ 21錠:実薬21日間・休薬7日間
28錠:実薬21日間・プラセボ7日間
第3世代 マーベロン・ファボワール 1相性

どのピルを服用する時も、血栓症に注意が必要で、特に最初の3ヶ月がリスクが高いと言われています。
また、吐き気や頭痛などの不調も薬を変えておさまる事もありますので、気になる症状があれば必ず処方医に相談しましょう。

まとめ


漢方相談をされる方でピルを服用中の方は、たくさんいらっしゃいます。
ピルを服用中ですと、本来の症状が隠れてしまっているので、以前の生理の状態を伺うことで現在の体調を推測します。

また、逆にピルをどうしても飲みたくないという方も多く、漢方薬を頼りにする場合もあります。

ピルを使う使わないは、最終的にはご本人の意思が大切です。
いずれにせよ、ピルのメリット・デメリットを把握した上で、むやみに怖がらず判断しましょう。

2020年8月13日 木曜日